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「まんまやん!」「ずるくね?」--- 東京都英語スピーキングテスト導入の断末魔

22年3月17日付のネット版EduA(朝日新聞)に「都立高入試英語スピーキングテスト、民間試験GTECとそっくり 都教委は「似ていても違う」」と題する記事が掲載されました。石田かおるさんと山下知子さんによる署名記事です。

https://www.asahi.com/edua/article/14573655


この記事は、都立高入試で使われる英語スピーキングテスト(ESAT-J)の「確認プレテスト」と、ESAT-Jに関して都教委と協定を締結したベネッセコーポレーションが開発・実施するGTEC-Core(GTECのうち、中学2,3年レベルのもの)が「酷似している」ことを指摘し、「GTECを受けて準備する子が有利になる」のではないかと疑問を呈しています。


取材は丁寧で、ESAT-JとGTECを「冒頭説明、出題形式、出題数、準備時間、解答時間、採点基準」の点から比較したうえで、区立中学校の教員と生徒たちに意見を求め、最後に、都教委の担当者の考えを紹介しています。


なにはともあれ、読者の皆さんご自身で両者が「酷似している」かどうかご判断いただこうと思います。それぞれのサンプル問題が掲げられているウェブページのURLはつぎのとおりです。

GTEC: https://www.benesse.co.jp/gtec/fs/sample/gtec/

ESAT-J: https://bit.ly/3N4JcVw


いかがでしょうか。


EduAの取材に対する、都教委の担当者の回答は以下のとおりです。重要な部分ですので、少し長くなりますが、そのまま引用します。


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「似ている」との声に対し、都教委の担当者は「似ていたとしても違う」と言う。「(ベネッセの)基盤自体は活用するが、都教委の出題方針を作り、測りたい能力をタスクとして設定し、都教委の監修のもとで作っている」と話す。「似ているというが、音読や応答、ストーリーを話す問題は他の英語民間試験でも採り入れられていて、GTECだけではない」


担当者は「測りたい力を測れているかが大事。中学校の授業でやってきたこと、子どもたちに身につけてほしいもの、これらが測れているかどうかが大事で、似ているかどうかは問題ではないのでは?」と言う。「都の事業なので、妥当性のないことに対して無理して推し進めることはない。都教委としてどこに出しても恥ずかしくないものを出している。私たちが(民間事業者とは)違う目で見て、瑕疵(かし)がないかどうか見てきている」


また、ESAT-JとGTECのテスト内容が酷似していた場合、入試の公平性を損なうのではないかと尋ねたが、都教委は「協定等にて個人情報管理の徹底及び禁止行為を規定し、公平性・中立性を担保している」「お互いの良さを、協議しながら、新しいものを作り上げている」とし、明瞭な回答はなかった。ベネッセとどのような契約を結んでいるかについては「回答は難しい」とした。

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「測りたい力を測れているかが大事。中学校の授業でやってきたこと、子どもたちに身につけてほしいもの、これらが測れているかどうかが大事で、似ているかどうかは問題ではないのでは?」という件、前段はそのとおりです。問題は後段で、ESAT-Jに関して都教委と協定を締結し、新たなスピーキングテストを共同で開発・実施しようとする事業者が独自のスピーキングテスト(GTEC)をすでに開発していて、(もちろん有料で)実施しているという点にあるのです。


そうなれば、この記事の冒頭に引用されている教員のように、「試験において慣れはとても大事。ぱっと見て、生徒が『これ、やったことある』と感じるのであれば、GTECにした方がいいと思う」となるのはごく自然なことです。


では、ESAT-J開発に関して都教委は一体、どんな役割を担ったのでしょうか。ここで、念のため、都教委と事業者の関係について確認しておきましょう。22年2月17日付の「中学校英語スピーキングテスト(ESAT-J)の取組状況について 」(教育庁)という文書があります。https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/press/press_release/2022/release20220217_02.html

それに付された「別紙」(pdf)の1ページ目に「(2) 事業スキーム」と題された項目があり、つぎのように記されています。


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Δ 都教委と、試験の実施・運営に関する実績のある事業者が、協定を締結し、民間の知見を活用して新たなスピーキングテストを共同で開発・実施

Δ 都教委の監修の下で作成された独自問題により実施

Δ 協定等にて個人情報管理の徹底及び禁止行為を規定し、公平性・中立性を担保

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EduAの記事の引用にあるように、EduAはESAT-J開発にあたって都教委がどのような役割を果たしたかについても都教委の担当者に問うています。しかし、返ってきた答えは論点をずらしたものでしかなかったようです。


今回のEduAの記事はESAT-Jが抱える根本的な問題の一つを徹底的に浮かび上がらせたという点で大きな価値があります。


念のために書き添えておきますが、わたくし(やESAT-Jの導入に否定的な考えの人の多く)は英語スピーキングテストそのものに反対ということではありません。実際、多くの英語教員は子どもたちのスピーキング力を育成するためにさまざまな工夫を凝らしています。ESAT-Jはこうした努力も水の泡にさせてしまう危険性を持っているのです。


大学入試に英語民間試験を導入するという問題が大きな議論を巻き起こした時、それに異を唱え、事態を大きく動かした人たちの中に当事者として高校生がいたことをご記憶の方も多いと思います。

https://webronza.asahi.com/culture/articles/2019121800004.html


今回取り上げたEduAの記事の冒頭には中学生のこんな声が紹介されています。


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区立中1年の男子生徒は3月、ESAT-Jのプレテスト(中略)と、ネット上にあるGTECのサンプル問題(中略)に挑戦してみた。日本語の問題文も似ていて、「どっちがESAT-JでどっちがGTECなのか、交ぜられたら分からない。まんまやん!」。生徒の中学校ではGTECを受験していない。「GTECを受けている学校は(都立高入試)対策になる。ずるくね?」と話した。

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この声に都教委の担当者はなんと答えるのでしょうか。

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