「入試改革」についての記事

更新日:8月10日

お読みになったかたも多いかと思いますが、けさ(2121年8月9日)の朝日新聞朝刊に「入試改革」に関連する記事が掲載されています。https://bit.ly/3lISHOJ


そこには南風原(はえばら)朝和さんと鈴木寛(ひろし)さんの意見が載っているのですが、みごとに対照的な意見で、両者を読み比べることによって、「入試改革」の本質を窺うことができます。


鈴木さんは、「高校教育と大学教育、そして両者をつなぐ大学入試を改革するポイント」は三つあり、「一つ目は高校・大学教育を探究的な学びにする、二つ目は「思考・判断・表現」の力をみる記述式問題を入れる、三つ目は英語の「「書く・話す」力も問う」とします。


その上で、一つ目については「かなり進みました」と評価しておいでです。《そうなんだろうか?》というのがわたくしの率直な反応です。もちろん、数多くある高校・大学のなかには探求の学びの場にすることに成功したところもあるでしょう。しかし、問題は探求の学びとはほど遠い状況に置かれている数多くの高校・大学があるという点です。今後の日本の発展を考えたときには、一握りでもよいから、少しでも理想に近い教育ができる場を作ることこそが重要なのだという考えが透けて見えます。


二つ目の記述式問題について、鈴木さんは、導入は必要という考えを変えておらず、寸分のブレも許さないという「国民感情」を読み切れなかったが故に頓挫したと言います。


対照的に、この点について南風原さんは「誰が採点しても同じで自己採点とも一致するような問題でなにが測れるのか」を問題にします。そのような形態の問題に近づけば近づくほど、記述式問題で測ろうとしている「「思考・判断・表現」の力」を測ることから遠ざかってしまうことはすでに各所で指摘されているとおりです。


三つ目に関連して、鈴木さんは英語の民間試験を共通テストに導入することが頓挫したのは、開催場所や受験生の費用負担などの技術的問題の解決のために適切な手段を講じることができなかったことが原因であると分析し、英語民間試験の共通テストへの導入やその根本にある、4技能のバランスがとれた力の育成は議論の前提とされています。


この問題について、南風原さんは「もし地域格差や経済格差がなくなれば、それを共通テストや個別試験に導入してよいのでしょうか」と疑問を呈します。さらに、「民間試験の内容や採点は大学入試として適切か、その試験に向けて学校現場などでなされるだろう対策は英語学習のあり方として適切か。そんな議論は検討会議ではされませんでした」と続けます。おっしゃるとおりです。ここで南風原さんは注意深く、共通テストだけでなく、英語民間試験を個別試験に導入することの可否も問うています。重要な点です。


こうした議論は目先の話だけに留めてはならず、中長期的な視点からもなされなくはなりません。もうそろそろ、そういう議論をするべき時が来ていると思います。


みなさんのご意見をお聞かせください。



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