朝日新聞2022年2月15日付朝刊東京版社会面35ページに「北京Olympics 2022」題されたコラムがあります。岩佐友さんという記者の署名記事で、前日に行われた羽生結弦選手の
記者会見の様子が手短にまとめられています。その最後にこんな一文があります。
これからも羽生結弦として、羽生結弦が大好きなフィギュアスケートを大切にしながら極めていけたらと思います。
今後について尋ねられた時の応答の一部です。この記事を読んだとき、「羽生結弦が大好きなフィギュアスケート」という一節が目に留まりました。ええ、あいまい表現です。つまり、これは「羽生結弦がフィギュアスケートのことを好きだ」に対応するのか(「A読み」としましょう)、「フィギュアスケートが羽生結弦のことを好きだ」に対応するのか(「B読み」)どちらにもとれます。
この記事はとても短い記事ですが、実際の会見は約35分間でした。ですから、上の発言は記事を書いた記者がまとめたものかもしれません。幸い、会見の全体の動画がネット上にありましたので、その一つ、Kyodo Newsのもので確かめてみました。
その結果、上に引用した問題の文は30分を経過した辺りでそのままの形で出てきていることが確認できました。音声で聴いても、少なくともわたくしの耳にはA読みにも、B読みにもとれます。
みなさんのご意見を聞いてみないとわかりませんが、おそらく多くの(ほとんどの、かな)方はA読みを採り、B読みは考えもしなかったと答えるのではないかと思います。文脈的にも、問題の箇所の前に「(これからも)羽生結弦として」とありますので、A読みがかなり前面に出てきても不思議はありません。
まあ、それはそうなのですが、B読みも捨てがたいですよね。《じぶんのことを強く、深く愛してくれているフィギュアスケート、そのフィギュアスケートをこれからも大切にして生きていきたい》、いかにも羽生くんらしいと思いませんか。
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