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『ことばのからくり』特設ページのことなど(補注つき)

更新日:2020年3月21日

少し前に、文法絵本『ことばのからくり(全4冊)』(岩波書店)復刊についての記事を書きましたが、岩波書店のサイトに特設ページが用意されています。ぜひご覧になって下さい。 http://www.iwanami.co.jp/moreinfo/2040510/top.html 書誌データページ http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/20/8/2040510.html 右下のMORE INFOボタンから、特設ページに飛べるようになっています。 この絵本は1996年の出版ですから、まだわたくしが小学校英語についていろいろと発言を始める前のことです。振り返って、少し自慢げに言うと、この本の出版は10年早かったかなとも思います。十数年が経過して、日本の言語教育環境があやしげな方向に歩みを進めていることがかなりはっきりとしてきたいま、この本を1人でも多くの子どもたちに楽しんでもらいたいと思います。もっと言えば、子どもたちだけでなく、おとなたちにもぜひ読んでもらいたい。 窪薗晴夫さんと『ことばの力を育む』(慶應義塾大学出版会)から出したのが2008年のことです。この本、小学校での英語活動の教材としても利用してもらえるようにと作った本ですが、おもしろいことに版元の話では今年になってその売れ行きが徐々に伸びてきているということです。読者カードが用意されていないので、はっきりした理由は分かりませんが、おそらくは英語活動に追い込まれた学校や先生がたの間の口コミでその存在が知られるようになったからではないかと思います。この本ですべてをまかなうわけにはいきませんが、英語活動の時間の一部にこの本を利用すると、子どもたちの潜在力のすごさに授業が盛り上がること、間違いありません。 きょう(2010年8月12日)の朝日新聞朝刊に文科省教科調査官直山木綿子さんの「言葉交わす楽しさ知ろう」という記事が掲載されています。以前からの主張と変りありません。なぜ外国語なのか?なぜ英語なのか?という問に対する答がありません。「(英語の—大津注)発音が苦手な先生は、外国語指導助手(ALT)やデジタル教材に任せればいい」というくだり、小学校の先生がたにはどう聞こえるのでしょうか? 【補注】最後の段落の「なぜ外国語なのか?なぜ英語なのか?という問に対する答がありません」の部分はこのままでは直山さんに公平ではないので補います。 この問に関連したことをまったく語っていないというのではありません。直山さんはこう言います。「間違うことも恥ずかしがらない小学生のうちに、あえて母語ではない外国語に触れ、人と言葉をやり取りする楽しさ味わう」と。でも、なぜ外国語で?でも、なぜ英語で? 直山さんは続けます。「外国語を話す相手に一生懸命耳を傾け、片言でも自分の思いを伝えようと努力する」と。でも、このやり方、おかしくありませんか?まずは「相手に一生懸命耳を傾け、片言でも自分の思いを伝えようと努力する」ことの大事さを母語で感じとらせるべきではありませんか? 直山さんは言うでしょう。《日本語じゃ照れたり、恥ずかしがって、なかなかうまいこと、いかへんのです。》そうでしょうか?仮に「日本語じゃ照れたり、恥ずかしが」ることがあったとしたって、その仕組みもよくわからない、語彙も限られている英語でどんなやりとりができるというのでしょうか? じつは、これ、直山さんたちとずっと平行線をたどっている議論なんです。つまりは、議論になっていないのです。未だに、どうして考えをかなり共有できる直山さんとこの点で意見が噛み合わないのか、不思議でなりません。この点をどうにかしておかないと、教科化推進派を利するだけになってしまう危険性があります。(2010年8月14日付記)


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