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美加 五十嵐

がんばれ、全英連!

更新日:2020年3月20日



「全国英語教育研究団体連合会」というのが正式名称で、全英連のウェブサイトによると「全国の中学校・高等学校の英語教員約6万人を会員とする英語教育研究団体」であるとされています。毎年開催される全国大会も60回を越える老舗です。


その全英連のウェブサイトに2014年4月8日付で「全英連秋田大会記念講演講師についての経緯説明及びお詫び」と題された文書が掲載されました。会長と秋田大会実行委員会長名の正式文書です。「秋田大会」というのは2014年11 月 7 日、8日に開催される全英連秋田大会(全国大会)のことです(会場は秋田県民会館(1日目)と国際教養大学(2日目)です)。


ことの発端を記した部分を引用します。


秋田大会実行委員会は、「あきた発!未来につなぐ英語教育~小・中・高・大・産の連携を目指して」を大会コンセプトとして準備を進め、記念講演の講師として鳥飼玖美子先生に早くからご依頼申し上げ、ご快諾をいただいておりました。しかし、昨年、鳥飼先生がご共著者のお一人として出版されましたご著書『英語教育、迫り来る破綻』の内容の一部と、秋田大会における上記コンセプトとの関連性について、実行委員会内外から少なからぬ意見がありました。私どもは無難な大会運営を気にかける余り、熟読、熟慮することなく、ご著書の内容と秋田大会の目指す方向性は必ずしも一致していないと性急に判断し、誠に一方的で失礼な行為でありましたが、一時、記念講演のお願いをお断りすることをお伝えいたしました。


2013年11月16日、17日に全英連東京大会が開かれ、そこで配られたビラには次回秋田大会の記念講演の講師として鳥飼さんのお名前がありました。ところが、東京大会の終了後ほどなく、秋田大会実行委員長名で鳥飼さんのもとに講師依頼撤回の知らせが届いたのです。当然のごとく、鳥飼さんは当惑し、講師依頼撤回の理由として名指しされた『英語教育、迫り来る破綻』(ひつじ書房)の共著者として、江利川春雄さん、斎藤兆史さん、そして、わたくしの3人も同様に当惑しました。


しかし、いろいろと情報を集めてみると、上の引用で「実行委員会内外から少なからぬ意見がありました」と表現されている部分にさまざまな事情があることがわかり、当初の当惑は怒りに変わりました。


常々、「全国の中学校・高等学校の英語教員」に対し、できる限りの支援をしたいと考え、実際、『英語教育、迫り来る破綻』の出版も多くの先生がたの思いを代弁したいという気持ちがありました。もちろん、意見の多様性は尊重されるべきで、わたくたちの考えを強制するつもりは微塵もありません。そういう思いがまったくと言ってよいほど伝わらなかったことはまことに残念です。


以来、約4か月にわたり、全英連と鳥飼さん(それに、わたくしたち3人)の間で、多くのやりとりがなされました。途中、鳥飼さんも、わたくしたちも、どうして事態の正しい把握と適正な対処ができないのか、理解に苦しむことも少なからずありましたが、4月8日付の文書をネット上に公開するという形で決着を見た現在、そのやりとりの詳細を明かす必要はないかと思います。


最終部分で文書は「先生のご講演内容を確認しないまま、実行委員会内外からの指摘を受けて短慮な判断をしたことを心から反省するとともに、鳥飼先生のご寛容なお心と英語教育への情熱に改めて敬服しているところです」と述べています。わたくしはこの表明を素直に受け入れ、評価したいと思います。


冒頭に書いた出会いがあった全英連ですが、それから数十年経って、多少とも英語教育の世界のことを知るようになると、全英連は中学校・高等学校などでの英語教育実践に基づき、重要な研究成果をたくさん挙げ、教育行政や先生がたにも大きな影響を与えている組織であることがわかってきました。


そんな折、2010年に開かれた神奈川大会(第60回大会)の記念講演の依頼を受けました。まことに光栄なことと思いましたが、当時、すでに小学校英語反対の立場を明確にしていたので、「文部科学省から後援を受けている大会の記念講演者としては問題があるのではありませんか」と全英連側にわたくしの方から尋ねました。それに対して多田野昌弘実行委員長から戻ってきた答えは「全英連は多様な考え方を大事にしています。先生のお考えをそのまま述べてくださってけっこうです」というものでした。意気に感じて、練りに練った講演を準備しました。


その後、発行されたニューズレターでは、さすがの多田野実行委員長も「どちらかというと小学校段階の外国語教育に慎重な姿勢を示す大津教授ですが、虚心坦懐にお話いただく中で、単に賛成・反対ではなく、本音で建設的な議論をしていただけるような提言をしていただきます」と多少慎重な言い回しを使ってはおられますが、最初の確認を反故にするなどということはまったくありませんでした。関係者による後日談では、全英連の内外から《なんで大津なんだ!》という反対論も上がったようですが、当時の全英連の執行部はそのような声にも考えが揺らぐことはありませんでした。


最近、小学校英語の早期化・教科化を進める立場の文科省からも「英語教育の在り方に関する有識者会議」の委員に任命されました。その会議において自由な意見表明が保証されていることの意義をぜひ全英連の現執行部の方々にも考えていただきたいと思います。


伝統ある全英連に神奈川大会当時の(と言ってもたった3,4年前の話ですが)自信と輝きを取り戻していただきたい。全英連がそのような努力を惜しまないのであれば、鳥飼玖美子さんはじめ、わたくしたちも心からの支援をお約束したいと思います。


【付記】鳥飼さんの「秋田事件」が起きているさなかに起きた上野千鶴子さんの「山梨事件」はご記憶に新しいところだと思います。






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