ことばの力(付録「さよなら 晋ちゃん 弁当」)

最終更新: 5月28日

2020年5月24日付の朝日新聞朝刊の「日曜に想う」というコラムに掲載された「言葉を「虐待」してきた安倍首相 連発しても重みなし」という文章をお読みになったかたも多いのではないかと思います。福島申二編集委員が書いた文章ですが、その内容に同意します。

以下、福島さんの文章から三か所引用させていただきます。


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丁寧、謙虚、真摯(しんし)、寄り添う、といった言葉をさんざん「虐待」してきたのはご承知のとおりだ。いま、危機のときに言葉が国民に届かず、ひいては指導力が足りないと不満を呼ぶ流れは、言葉に不誠実だった首相が、ここにきて言葉から逆襲されている図にも見えてくる。

(中略)

作家の故・丸谷才一さんが14年前、安倍氏が最初に首相に就いたときに、新著「美しい国への読後感を本紙で述べていた。「一体に言いはぐらかしの多い人で、そうしているうちに話が別のことに移る。これは言質を取られまいとする慎重さよりも、言うべきことが乏しいせいではないかと心配になった」

(中略)

そうした状況に向けて、首相は強い言葉をよく繰り返す。「躊躇(ちゅうちょ)なく」は連発ぎみだし、ほかにも「積極果断な」「間髪を入れず」「一気呵成(かせい)に」など色々ある。「力の言葉」を、「言葉の力」だと勘違いしてはいないか。

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小学生の時、作文で「非常に」や「とても」を不用意に使っていたら、先生から「そういうことばはあまり使い過ぎてはいけない。そうしていると、本当に「非常に」や「とても」と言いたいときに、読んでいる人が信用してくれなくなるからね」と言われたことを思い出します。強意表現は大事に使わなくてはいけないと教えられたのです。


加えて、ことばは思索の上に成り立ってはじめて意味を持つものですから、ことばの力を発揮させるためには深い思索とことばを愛でる習慣がついていなくてはならないことは中学校のときに教えられました。上の文章の中に引かれている丸谷才一さんの慧眼には脱帽するしかありません。


安倍晋三首相の愛用強意表現には福島さんが挙げているもの以外にも、「完全に(一致した)」「なんとしても」「しっかりと」「スピード感をもって」(最後のものは違和感がある表現ですが、他の閣僚たちも使っているようです)などがあります。最近では、こうした強意表現に加え、「~と承知している」「~は事実だろうと思う」「批判は真摯に受け止めなくてはいけない」「~の責任はわたしにある」などのはぐらかし表現が多用されています。


学習指導要領ではことばの力の重要性が謳われていますが、じぶんたちの国の首相がこれだけことばを「虐待」しているところをニュースなどで繰り返し見せつけられている子どもたちはいったいどんな思いでいるのでしょうか。


【付記(2020年5月28日)】

5月27日付のネット版スポニチにこんな記事がありました。壇蜜のこのセンスの一分でも安倍首相にあればねぇ。


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[5月27日の文化放送「大竹まこと ゴールデンラジオ!」(月~金曜後1・00)についての記事。昨年11月時点で、首相が「任命責任は私にある」という趣旨の発言を公の場で49回行っていたという毎日新聞の記事を取り上げたことに触れて]今年に入っても、賭け麻雀問題で辞職した東京高検前検事長のの黒川弘務氏(63)の問題などがあり、50回は確実に超えている計算になる。大竹が「50回を超えてると。批判は真摯に受け止めると。矢で言えば、胸あたりに50発くらい刺さってるわけだよね?」とたとえ話を挙げると、いとう[あさこ]も「でも、元気に歩いている」と驚きつつ同調した。さらに壇蜜は「弁慶より強いですね」と、平安時代の僧兵・武蔵坊弁慶を引き合いにコメントした。

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【付録】

以下は2007年、第一次安倍内閣の終焉にあたって、当時連載していた毎日小学生新聞の「楽しいことばの広場」に「「こと広」うそ号外」として寄稿したものです。早乙女民さんのイラストとともにお楽しみいただければと思います。あ、念のために書いておきますが、あくまで「うそ」号外ですからね。決して「さよなら 晋ちゃん 弁当」の包装紙を探そうなどとはしないでください。


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