21日は講演・対談、そして、懇親会、カラオケ、三次会などとフルコースをやったので、きのうはさすがに疲れてペースを落として仕事をしていました。すると、7時のNHKテレビニュースが高校の学習指導要領の改訂について報じはじめ、なかでも、英語の授業は英語でという方針が打ち出されたと大々的に報じました。旧友の佐藤久美子が満面の笑みでインタビューに応じている姿まで出てきて、「こりゃ、いかんな!」。(ちなみに、9時のニュースではもっと大々的に。ただし、佐藤久美子はカット。)
文科省をあなどってはいけません。各種知恵者揃いなのです。まずは英語や英語教育についてきちんとしたわきまえを持っている人たちがいます。彼らが「オールイングリッシュ」(一応念のために書いておくと、これは和製英語)を容認するはずはないのです。でも、グループ・ダイナミクスというものがあるから、ですか?
教育政策について、理論にも実践にも通じている人たちもいるのですよ。「オールイングリッシュ」なんて方針を打ち出したら、数年後、あの方針は間違いだったということになるのは目に見えている。そんな方針を容認するはずはないんです。
ここまでお読み下さったかた、文科省が公表した「学習指導要領案」の原文をお読みになりましたか?ええ、文科省のサイトで閲覧できます。さらに関心がおありなら、「外国語」のページだけを抽出して、プリントアウトすることだってできます。あ、88-93ページです。
すると、「4 英語に関する各科目については,その特質にかんがみ,生徒が英語に触れる機会を充実するとともに,授業を実際のコミュニケーションの場面とするため,授業は英語で行うことを基本とする。その際,生徒の理解の程度に応じた英語を用いるよう十分配慮するものとする。」(93ぺ)とあります。
ちゃんと、「基本とする」とか、「生徒の理解に応じた」とか、書いてあるんです。おなじみ安全弁です。ちなみに、わたくしだったら、「生徒の理解に応じた」の前に、「教師の力量及び」と付け加えます。(^^)
今朝の朝刊を見ても、見出しで「英語の授業は英語で」だなんて書いてあるので、だまされちゃうですよね。本文で説明している新聞もありましたが、多くの読者にとっては見出しが印象的です。
あっ、お前はいつから文科省の味方になったかと、あわてないで下さい。わたくしは文科省の擁護をしているのではありません。まずは冷静になる。そして、学習指導要領案になにが書いてあるかを確かめる。そして、何を意図しているのかなと考える。かなり高度な「ことばへの気づき」が必要です。
ここで踊ってしまうと、それを喜ぶ人たちを益することになってしまいます。「それを喜ぶ人たち」? さて、だれでしょうねえ?
《追加》 文科省では1月21日まで、一般の人たちからの意見を求めています。「パブリックコメント」(略して「パブコメ」だなんて言っているようですが)の公募です
高等学校学習指導要領、特別支援学校学習指導要領の改訂案等の公表及び意見公募手続(パブリックコメント)の実施について http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/20/12/08121911.htm
そんなものはアリバイ作りだと言わないで、たくさんの方々が反対の意思表示をしたら、動かせるかもしれませんよ。とくに、高校の先生がた、ぜひ!
《さらに追加》 やはりこのニュースは結構注目を集めているようで、ちょっと買い物に行っている間に結構の数のメールをもらいました(例によって、先生がたは身分が世間に明らかになるのを嫌い、メールによる私信です)。その中に、上のメッセージだけでは、何をすればよいかわからないというのが数通ありました。そのご意見に応えて、端的に書きます。
1 授業を全部英語でやるなどということは、たとえ「基本とする」という言い方でも、受け入れられないという見解を述べる。上記の「意見公募」にも意見を寄せる。そのとき、(あ)できるのであれば、そのほうがよいが現実的に無理という立場なのか、(い)できるか、できないかということではなく、そもそもそんなことが高等学校における英語のあり方は異なるという立場なのかを明確にさせる。
2 さあ、全部英語だ! 大変だ!と踊らされない。いずれ、「オールイングリッシュに対応するための教室英語」とかいう類の本がたくさん出るでしょうが、あくまで冷静に行動する。
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