大学入学共通テストと英語民間試験

最終更新: 3月20日


すでに広く報道されているとおり、2019年11月1日、萩生田光一文部科学大臣は大学入学共通テストに英語民間試験を20年度に導入することを見送る方針を表明し、24年度に実施する入試に向けて導入を進める考えを示しました。同大臣は同時に、今後については検討組織を設け、「仕組みを含め全面的、抜本的に見直す。1年をめどに結論を出したい」と述べたとされています(日本経済新聞電子版2019年11月1日9:38)。


まず、ことの重大さと問題の複雑さを考えると、検討の期間を「1年をめどに」としている点が大いに懸念されます。そして、見直しにあたりなにより重要なのはその検討組織のメンバーです。ここで、またいつもの顔ぶれ(か、その仲間たち)が揃うようであれば、その見直しは単なるアリバイ作りに過ぎないことは明白です。


今回の検討組織は「仕組みを含め全面的、抜本的に見直す」というのですから、それにふさわしい、この問題についてしっかりとした議論ができるメンバーを集め、十分な時間をかけて検討を行ってほしい。そして、言うまでもなく、民間試験の導入を前提とした議論ではなく、根本からの検討を期待したい。


そこで、今回は議論の分岐点を整理し、この問題の本質を探ることにしたいと思います。関連する分岐点をまとめたのが図1です。じつは、この問題の論点は交差分類されるので、このような分岐図では捉えきれない部分があるのですが、わかりやすさという観点から分岐図で示すことにしました。


論点(A)は「学校英語教育は4技能すべての育成を目指すべきか」というものです。この論点についてNoの立場をとる場合(①)は学校英語教育の目的(なんのために?)と目標(どんな力を、どの程度)を明確にする必要があります。


論点(A)についてYesの立場をとった場合、論点(B)に進みます。論点(B)は「大学入学共通テストにおいて、4技能に対応すべきか」というものです。この論点についてNoの立場をとる場合(②)、各大学が行う「二次選考」では4技能に対応すべきと考えるか否かを明らかにする必要があります。もちろん、学部学科ごとに決すればよいという考えもありえます。


論点(B)についてYesの立場をとった場合、「その試験は民間試験に委ねるのかどうか」という論点(C)に進むことになります。この論点にNoと答えた場合、「では、その試験は大学入試センターが作るのか」という論点(D)に進みます。Yes(④)であれば、大学入試センターが4技能対応試験を作ることになります。また、No(③)であれば、大学入試センター以外の新組織を作り、そこが4技能対応試験を作ることになります。


論点(C)「その試験は民間試験に委ねるのかどうか」に戻ります。そこでYesと答えた場合、論点(E)に進みます。論点(E)は「民間試験に委ねるとして、その民間試験は1つに絞るべきですか」というものです。この論点にYesと答える(⑥)のであれば、いずれか将来、どの民間試験を選ぶのかを決する必要があります。論点(E)にNoと答えた場合には今回実施を見送ったのと同じ形態で試験を実施することになります。


わたくしの考えにもっとも近いのは②で、必要に応じて、学部学科ごとの二次選考で4技能に対応すればよいと考えています。4技能に対応した試験の必要性を感じる学部学科はさほど多いとは思いません。ただ、民間試験を導入してまでも4技能対応試験にこだわった人たちの中には(決してすべてではありません)、そうしないと小中高での英語教育が変らないと考えている人もいます。その考えの人たちからすれば、②+二次選考方式ではなんの問題の解決にもならないということになるのでしょう。しかし、そんな無理を押しても、残るのは混乱だけだというのが今回の実施延期騒動から得た教訓ではないでしょうか。


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今回の実施延期を受けて、日本記者クラブが「英語教育改革の行方」と題したシリーズを開いています。すでに吉田さん、羽藤さんの分は終了し、動画がYouTube上で公開されています。

https://www.jnpc.or.jp/archive/conferences/35548/report

吉田研作・上智大学特任教授 11月7日

羽藤由美・京都工芸繊維大学教授 11月22日

下村博文・元文科相 11月29 日

南風原朝和・東京大学名誉教授 12月02日 【追記】 上記記事をFacebookに転載したところ、大橋穣二さんから「 私も同じような主張をしています」というメッセージとともに下記の記事をご紹介いただきました。 https://www.facebook.com/photo.php?fbid=10156309392356816

ありがとうございました。心強い限りです。

#英語教育言語教育

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