小中高でも、大学でも、教員同士で話をするときに、相手のことを「~先生」と呼ぶのが一般的だと思います。わたくし、ずっと、この慣例をおかしいと感じてきました。そこで、状況をみきわめながら、なるべく「~先生」という呼称は使わず、「~さん」というようにしてきました。
しかし、「~先生」の慣例はかなり根強く、人前で学部長のことを「~さん」と呼んだりすると、《何様なの!》という表情を浮かべる人(学部長本人ではなく、わたくしがそう呼ぶのを耳にした人)も少なくありません。
先週、話題になった、工藤勇一という中学校の校長が書いた本を読んでいたら、つぎの一節に出会いました。
— 「ご存じのように、学校では教員同士でも「〇〇先生」と呼び合うのが通例ですが、本校では「校長」と「副校長」を除き、「〇〇さん」と呼ぶことをルール化しています。これはかなりのカルチャーショックだったようで、当初は多くの教員が困惑していました」(工藤勇一. 2018. 『学校の「当たり前」をやめた。— 生徒も教師も変わる!公立名門中学校長の改革』時事通信社、pp. 165-166) — 我が意を得たり!あ、念のために付け加えておくと、わたくしはこの著者が書いているすべてに賛成であるということではありません。少なくともこの部分については同意できるということです。 この話をすると、いつも思い浮かぶのが東京教育大学でわたくしの知的基盤を整えてくださった恩師のK先生です。わたくしが学部生だったとき、彼はわたくしを「大津」と呼びました。自然なことです。ところが、大学院生になって学部生用の授業で話をするとき、彼はわたくしを「大津君」と紹介しました。少し時間が経過して、何年かの間、K先生と同じ大学の同じ学科に勤務することになったのですが、会議などで、彼はわたくしを「大津氏」と呼びました。そして、ご想像どおり、学生や院生の前では「大津先生」と呼びます。「大津」「大津君」「大津氏」「大津先生」を状況に応じて使い分ける。すばらしいとしか言いようのない言語力と言えます。 ここで問題です。 1 K先生はもう一つ、「大津さん」という呼称もお使いになります。さて、どのような状況においてでしょうか。 2 現在、K先生とわたくしとが二人で会話をするとき、先生はわたくしのことをなんと呼ぶと思いますか。 お楽しみください。
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