東京都の英語スピーキングテスト(ESAT-J)をさまざまな側面から検証した岩波ブックレットができあがりました。
大津由紀雄・南風原朝和(編)
高校入試に英語スピーキングテスト?──東京都の先行事例を徹底検証
(岩波ブックレット 1085)
748円(税込)
86pp.
このブックレットを「緊急出版」することにした主な理由はつぎのとおりです。
① ESAT-Jが抱える問題をわかりやすく整理し、その実体と実施の実態を広く知ってもらうため。ESAT-Jの問題は東京都ローカルの問題と捉えられることが多く、新聞やテレビニュースでも全国版で取り上げられることはあまり多くありません。このブックレットを広く読んでいただき、日本の英語教育・学校教育全体の問題として考えるきっかけになればと願っています。
② 見切り発車のように走り出した東京都に、いまからでもいったん立ち止まって検討することを強く要請するため。今年も中学3年生を対象としたESAT-Jの実施が11月26日(日曜日)に予定されています。少なくとも、その結果を都立高校入試に利用することはきちんと(再)検討すべきです。
③ 東京都以外で高校入学者選抜に大規模なスピーキングテストを導入することを考えている道府県等があれば、東京都で実施されたテストで何が起きたかを正確に知っていただいて、慎重な判断を要請するため。
ESAT-Jは孤立した問題ではなく、今世紀初めに端を発する英語教育政策の一環として理解しなくてはなりません。その政策に本質的問題があることはすでに英語教育のさまざまな部分で露呈されています。都がすべきは従来の国や都の英語教育政策を守ろうとするのではなく、それが適切なものであるかどうかを専門的な観点から問い直し、また、テストの制度面や実施面で重大な問題があれば、それが解決できるまでは実施を見送る、という慎重な対応です。わたくしたちはそれが世界の将来を背負ってたつ子どもたちに対する都の責務であると考えます。
一人でも多くのかたにこのブックレットを読んでいただきたいと願っています。情報の拡散をお願いいたします。
目次
はじめに………大津由紀雄・南風原朝和 第1章 ESAT-Jとは何か?………沖浜真治 第2章 入学者選抜試験としてのESAT-Jの公平性と合理性 ――不受験者に対する措置に焦点をあてて………南風原朝和 第3章 入試への英語スピーキングテスト導入を検討する際の基本事項 ――急ぎ過ぎた都教委が見落としたもの………羽藤由美 第4章 なぜ東京都はESAT-Jの実施にこだわるのか………大津由紀雄・久保野雅史 教師から1 「話す力」を付けるとは………教員A 教師から2 誰のための教育か………教員B 保護者から1 不誠実な対応に不信………保護者A 保護者から2 当事者不在のESAT-J………保護者B ESAT-Jの経緯に関する年表:国・都の動きと反対運動
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