この4月に刊行された、平田聡・嶋田珠巳『時間はなぜあるのか?---チンパンジー学者と言語学者の探検』ミネルヴァ書房の大きな広告が5月14日の朝日新聞朝刊書評ページに載りました。
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平田さんは京都大学野生動物研究センター教授で、『仲間とかかわる心の進化---チンパンジーの社会的知性』(岩波書店)など、チンパンジーの社会的知性や社会的行動などに関する研究業績を持った研究者です。嶋田さんは明海大学外国語学部教授で、『英語という選択---アイルランドの今』(岩波書店)をはじめ、言語接触などに関する研究業績を持つ研究者です。
ご承知のように、「時間」は古くから哲学的考察の対象とされ、現在では、哲学のみならず、比較認知科学や言語学を含む、多くの分野で研究され、興味深い成果がたくさん上がっています。この本は、ある大型研究プロジェクトで知り合った2人の研究者が「時間」という、得体のしれない難問に立ち向かい、共同研究を行った成果の一端をまとめたものです。
「得体のしれない難問に立ち向かい」と書きましたが、読者は構える必要はありません。200ページをわずかに超える比較的小さな本です。表紙もなかなかしゃれていますし、肝心の本文もとてもわかりやすく書かれています。わたくしのお気に入りは2人の対話を記録した第5章です。気負うことなく、お互いの語りを楽しみながらの会話は読んでいて心弾む思いがします。
個人的な趣味としては、静かな木陰で紅茶を飲みながらゆっくりとページをめくっていく、そんな読み方がよく似合う本です。実際、わたくしも5月の連休にそんな風にこの本を楽しみました。
なお、嶋田さんには、嶋田珠巳・鍛冶広真編著『時間と言語』(三省堂、2021年)という編著書もあります。『時間はなぜあるのか?』を読み終わって、ことばと時間の問題に関心を覚えたようでしたら、この本を読んでください。
そうそう、お気づきになりました?冒頭でご紹介した、朝日新聞の広告ですが、この本の脇にちょっと小さめではありますが、わたくしがだいぶ前に編んだ『はじめて学ぶ言語学』という本も紹介されています。大学での入門講義の教科書などとして多くの方々に読んでもらっています。
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