能代以降に考えたこと (再修正版3:00p, 12/29/11)

最終更新: 3月21日

能代では、チョムスキーの《教育において大切なのは学習者をその気にさせることで、どう教えるかということは些細な問題です。学ぶということは学習者の内側から起こることで、学習者自身が学びたいと思うことが肝心です。学習者がその気になったら、教え方がどんなにまずくても、学びはなされるものです》という教育観・教師観を出発点に、それへの共感をわたくしなりに肉付けして話したということを書きました。


会が終わった後、横溝さんは、いつものとてもやさしい口調で、「大津先生、学習者のやる気を引き出すことが重要なのはみんな理解できると思うのですが、問題は《どうやったら学習者のやる気を引き出すことができるのか》ということだと思うのです」と語りかけてきました。やはり、持つべきものは友です。わたくしの考えの煮詰まっていないこと、煮詰まっていない点をさりげなく指摘してくれます。

実際、横溝さんは彼の講演の中で、こう自問自答しているのです。《学習者の「やる気」を引き出すために、教師ができることって何だろう?》《答1: 人は、自分が正当に評価されていると感じるとき、やる気が出る→だから、評価の工夫、フィードバックの工夫が大切である》《答2:人は、自分のことを気遣ってくれる人がいると感じる時、やる気が出る→だから、学習者の多様性への配慮、教室運営の工夫が大切である》《答3:人は、やっていることが楽しい時、やる気がでる→だから教え方・教材の選定と工夫が大切である》《答4:人は、やっていることに意義があると感じる時、やる気が出る→だから、相手への理解、自己表現の場の提供が大切である》。

横溝さんは残りの時間を使って、上のそれぞれの点について、田尻実践の優れた点を例示しました。そして、締めのスライドで、《学習者のために教師ができることは数限りなくある!》とまとめました。

横溝さんとわたくしの講演のあと、のしろ日本語学習会の先導役である北川裕子さんと今回のプロジェクトの立案者である野山広さんを交え、4人で話し合い(座談会)をしました。その体験も踏まえた上で、横溝さんが提起した問題に対して、わたくしはこんな風に考えています。

学習者をその気にさせる方法はいろいろあると思います。それは横溝さんが自問自答の回答部分を「回答「例」」としていたことにも窺えます。その個々の方法をできるだけ分析的に整理し、教師に提示することは大いに意義のあることと思います。ただ、特定の場面で、特定の学習者と対峙した教師が学習者のやる気を引き出すためになにをすべきかという問いに対する答を得るためのレシピ―(気どって言えば、「アルゴリズム」)があるわけではないということはきちんと承知しておく必要があると思います。だから、教師はできるだけたくさんの引き出しを用意しておいて、その場で、なにをしたらよいかを判断するのがよい。引き出しをたくさん用意する、特定の状況でどの引き出しを開ければよいかを判断する、そういうことができるようになるためには、できるだけ多くの体験を積むしか方法がない。能代でわたくしはここらあたりのことをごくごく粗っぽく《教師の自己研鑽が不可欠である》と表現しました。

ただ、おそらく、すべての教育に共通すると思われることが一つだけあるように思います。それは、目的と目標を学習者にはっきりと提示することです。「xという行為の目的」とは《なぜxをするのか》という問いに対する答、「xという行為の目標」とは《xによって何をどこまで達成しようとしているのか》という問いに対する答です。ここで大切なのは、目的は目標に先んじるということで、目的をあきらかにせず、目標だけを提示しても学習者の「やる気」は長続きしないでしょう。

もう一つ、付け加えておきたいことは、「教師の自己研鑽」の中には(教育)内容に習熟するよう努めることも含まれているという点です.。あたりまえのことですが、ここをきちんとおさえておかないと、「研究授業おたく」になってしまう危険性が大です。

まだまだ煮詰まっていないことは承知しています。講義のない2週間を使って、いろいろと考えてみたいと思います。

【追記】


横溝さんが「最新の似顔絵」を送ってくれました。上では、前に掲載したものをそれに差し替えてあります。ただ、最初のものもとてもいいので、横溝さんの許可を得て、ここに復活です。

横溝さんは、「日本語教育に関わる方々が、日本語教育のいろいろな分野の知識を整理したり、アイデアを得たりするリソースとなることをめざし」た「日本語教師のためのTIPS 77」シリーズを當作靖彦さんと編集しています。版元はくろしお出版です。その第一巻「クラスルーム運営」は横溝さん自身の手になるもので、「やる気を引き出すために教師ができること」について、横溝さんがが現在考えていることをまとめたもので、お勧めです。英語教育、国語教育の関係者にも有益です。 http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4874245358.html http://www.amazon.co.jp/%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%A0%E9%81%8B%E5%96%B6-%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%AA%9E%E6%95%99%E5%B8%AB%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AETIPS77-%E7%AC%AC1%E5%B7%BB-%E6%A8%AA%E6%BA%9D%E7%B4%B3%E4%B8%80%E9%83%8E/dp/4874245358/ref=sr_1_2?ie=UTF8&qid=1325121257&sr=8-2

参考までに、目次を掲げておきます。

学習者のやる気を引き出すには? 「困った学習者」にどう対応する? 自分の授業を見直すためのポイントは? 魅力的なクラスルーム作りのためのヒントが満載。 1 教師の役割について考えるためのTIPS 2 多様な学習者を理解するためのTIPS 3 多様な学習者に対応するためのTIPS 4 学習者との信頼関係作りのためのTIPS 5 教師の言動についてふり返るためのTIPS 6 教材と学習環境について具体的に考えるためのTIPS 7 学習支援者としての心構えにつながるTIPS

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