英語教育の在り方に関する有識者会議の第1回会合が本日(2014年2月26日)の午前10時から正午まで文科省で開かれました。 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/102/kaisai/1344178.htm
この会議の委員一覧はつぎのサイトに掲載されています。 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/102/maibo/1343931.htm
今月初めに、この会議の設置と委員が発表になった時、マスコミは楽天の三木谷浩史さん、有名英語講師の安河内哲也さんに注目しましたが、英語教育通の人たちはわたくしが委員に名を連ねていることに驚きを覚えたようです。なにせ、「あの」大津ですから。
そして、多くの人は「大津は取り込まれた」「(「実施計画」(後出)に批判的な大津も議論に加わったという)アリバイ作りだ」「ガス抜きだ」などと思ったようです。そういった要因もなかったとは思いませんが、たぶん、もっと別の要因が働いたと考えます。有識者会議での今後の「戦略」がありますので、まだ詳しく書くことはできませんが、今回の有識者会議の検討対象である「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」(2013年12月13日発表、以下、「実施計画」)が政府の教育再生実行会議の提言を基盤にしたものであること辺りにそのヒントがあると思います。 実施計画の概要はつぎのサイトで閲覧することができます。 http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/25/12/__icsFiles/afieldfile/2013/12/17/1342458_01_1.pdf さて、きょうの会議ですが、座長には吉田研作さん、座長代理には松川禮子さんが充てられました。そのあと、各委員が5分程度で思いを述べました。もっとも、人によっては5分を越えて長々と話しまくる人もおり、《こういう人にグローバル化などを語って欲しくない》と思いました。
わたくしは、おおよそ以下のことを述べました(わたくしは制限時間を守ろうとしたので、一部端折りました)。
まず、議論にあたっては、共通の認識を確認しておく必要がある。以下の2点はおそらく、全部ではなくても、大部分の委員に賛成してもらえると思う。
1 今後、英語が使える日本人がより多く育っていく必要がある。 2 現在の学校英語教育は根本的な問題を抱えており、改革が必要である。
ちなみに、1には「英語が使える」とあります。この点について、「英語が話せる」と短絡的に考える人も多いようです。
さて、上記を踏まえて、会議の冒頭にあたり、わたくしが主張しておきたいこととして、以下の3つの点を挙げました。
1 英語教育改革の検討には、短期的視野だけでなく、中長期的展望を見据える必要があり、 その点で、「実施計画」に散見される「2020年(平成32年)の東京オリンピック・パラリンピックを見据え」という認識には注意が必要である。たとえば、小学校英語の在り方をこの時間的制約の中で急いで論じるべきではない。
2 これまでの英語教育政策が十分な成果を上げてこなかった根本的理由は、「ことば(language)」という視点がほぼ完全に抜け落ちていたことにあり、それにより、外国語としての英語の教育だけでなく、母語としての日本語の教育(いわゆる「国語教育」)もあるべき本来の姿では機能していない。結果として、思考を支える言語である母語を活用できない日本人が増えている。このような事態を招いた最大の理由は、政策立案に関わる過程でことばの専門家が関与してこなかったことにある。この点で、今回、ことばの認知科学を専門とするわたくしをこの会議の委員に加えたことは大きな意味がある。うまくすれば、長い間、謳い文句だけに終わっていた、英語教育と母語教育(「国語教育」)の本格的連携の糸口が見つかるかもしれない。
3 教室で子どもたちと接し、新たな教育政策が導入されるたびに大変な努力を重ねておられる先生がた、ことに、小学校の先生がたのことを大事に考えて議論したい。わたくしの手元には先生がたからこの数年間で延べ数にして1000通を越えるメールが届いており、その大部分は悲痛な叫びである。
ちゃぶ台をひっくり返す発言を期待していた向きには、「おとなしい」と感じられるかもしれませんが、それなりの戦略を秘めたものと理解してください。
この会議の正式な記録は文科省のサイトにいずれ公開されますので、他の委員の発言についてはそちらを参照してください。
手短な紹介として、NHK News Webに掲載された、以下の文章をご参照ください。なお、掲載の写真はこのニュースの画面キャプチャーです。 http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140226/t10015543581000.html
—– この方針に対し、「楽天」の三木谷浩史社長は「英語を話せるかどうかは日本にとって死活問題だ。小学校から高校にかけての授業を変えていくためには、身についた力をはかる大学入試の英語を国際的に通用する外部試験にすることが有効だ」と話しました。 また校長たちからは「現場の教員はいじめへの対応や国語や算数の学力向上なども求められており、時間的にも態勢的にも余裕がない。十分な研修を受けられる仕組み作りが求められる」という声が相次ぎました。 —–
最後はどたばたした形で時間切れとなりました。まあ、今回はそれぞれの委員のお手並み拝見といった感じのものでした。実質的な検討は次回(3月開催予定)以降の会合でということになります。
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