The acquisition of syntax in children from 5 to 10 (1969, MIT Press)で、第一言語獲得研究に大きな影響を与えたCarol Chomskyさんが19日の早朝、ご自宅で静かに息を引き取りました。折から、ボストン周辺は今期最初の大雪だそうです。 (もともとの報せは20日発のもので、”late last night”とありましたが、NY Timesの報じるところでは、”Friday”とありますので、日付が変わってからだったのでしょう。)
Carolはここ数年、闘病生活を続けていました。お連れ合いのNoamも献身的に看護に努め、長旅は控えていたようです。最愛の妻を失ったショックはいかばかりかと思うととてもつらい。
冒頭に挙げたモノグラフは現在は絶版になっており、今では原書を読む人も減っています。しかし、この本の重要性はいまでもまったく減じておらず、きちんとした現代的視点から批判的に読むと、じつに多くのことが学べます。わたくしの言語心理学の講義ではまずこの本の話から始めることが多いのですが、何回読み返しても、新たな発見があります。
Carolはもともと音声学・音韻論についての優れた業績を持っており、その延長線上に、後年の読み(reading)に関する研究があります。また、触覚による伝達手段としてのtadomaに関する興味深い研究もあります。
Carolは、また、じつに愛らしいかたで、話をしていてじつに楽しく、話し終わった後はじつに豊かな気持ちになります。
もう一度お会いしたかった。いまはただご冥福を祈るだけです。
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