ESAT-J問題の根幹をもう一度確認しておきましょう

東京都の中学校英語スピーキングテスト(ESAT-J)の実施日11月27日(日曜日)が迫ってきました。ESAT-Jについてはじつにさまざまな問題が指摘されています。差し迫った、現実的な問題としてずさんとしか言いようがないやり方での試験監督・監督補助者の求人が行われており、しかも、その人集めに苦慮しているという点が多方面から指摘されています。


もちろん、そういった現実的問題も重要ではあるのですが、ESAT-J問題の根幹にあるのは、アチーブメントテストであるESAT-Jの結果を高校入試流用するというシステムを採用したことで不可避的に生じる「不受験者」の問題なのです。


「不受験者」の存在とその扱い方に問題があるらしいことはかなり広く理解されるようになってきたようですが、「不受験者」というのは体調不良などでESAT-Jを受験できなかった人だけを指すのではないということに注意する必要があります。


上に書きましたように、ESAT-Jはアチーブメントテスト、言い換えれば、英語スピーキング力の達成度を測定するためのテストで、その対象は東京都内の公立中学校に在籍する3年生です。ということは、都立高校への応募資格のある生徒たちの内、① 都内の国立・私立中学校に在籍する生徒たち、② 都内在住だが、都外の国立・私立中学校に在籍する生徒たち、③ 都外在住で都外の中学校に在籍している生徒たちは受験対象外になってしまうのです。このうち、①と②の生徒たちは受験することも可能であるとされていますが、③の生徒たちはESAT-Jを受験することができません。たとえば、東京都近隣の神奈川県に住み、神奈川県内の中学校に在籍する中学3年生は制度上、ESAT-Jを受験することはできないのです。


つまり、③の生徒たちが都立高校を受験しようとしたとき、ESAT-Jについては「不受験者」となるしか術がないのです。この問題に対処するため、東京都はこれらの生徒たちについて、欠けているESAT-Jの結果を一定の方法で推定する方針を立てました。この推定の方法に内在する問題点については心理統計・テスト理論の専門家である南風原朝和東京大学名誉教授が詳しく解説した「メモ」がありますので、関心のある方はご一読ください。

https://bit.ly/3AuZjqo


東京都の浜佳葉子教育長は2022年9月29日の都議会本会議で、この推定の方法を「合理的な最善の方策」と主張しました。議論のために仮にそうであるとしても、③の生徒たちにとっては公平ではありません。ESAT-Jを受けたくても受けることができず、推定点で合否を判定されてしまうのですから


《都立高校入学志願者のうち、③に属する生徒たちの数はごく少ないであろうから、大きな問題ではないのだ》という考えも耳にしました。仮に少数であったとしても、その生徒たちにとっては志望する都立高校に入学できるかどうかが推定点によって決められてしまうというのはどう考えても不公平です。そして、問題はそれだけではないのです。


合否判定のもとになる成績順リストは不受験者のものも含めて作られるのですから、推定点によって「不受験者」がリストの上位に割り込んできて、結果として、合格圏内にいた受験者が圏外にはじき出されてしまう可能性もあるのです。つまり、「不受験者」問題はごく一部の受験生だけの問題ではなく、受験者全員に関わる重要な問題なのです。


ESAT-Jの結果を都立高校入試のために流用することは不合理で、不公平です。《試験日直前になって試験を中止したり、都立高校入試のために流用することを止めたりすることは受験生を混乱に巻き込む可能性があるのでできない》という意見も耳にしますが、中止せずに実施された場合の混乱のほうがはるかに深刻です。そして、なによりも試験日直前までこの問題に真摯に向き合うことをしてこなかった東京都こそがその責任を問われるべきなのです。

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2022年10月19日に都庁記者クラブの記者会見場で、わたくしを含めた5人が東京都教育長と教育委員会委員に宛てた、令和5年度の都立高校入学者選抜に中学校英語スピーキングテスト(ESAT-J)の結果を使用しないことに関する要望書(2022年10月14日付)についての記者会見を開きました。 その席上でのわたくしの発言の一部がネット上で誤って紹介されていることに気づきました。そこでは次のように紹介されて