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『新英語教育』5月号                                 「ことばへの気づき」特集


『新英語教育』5月号が「ことばへの気づき」を特集しています。


巻頭論文は大山万容さんの「「言語への目覚め活動」とは---記号としての言語から社会的な言語へ」です。「言語への目覚め活動」と「ことばへの気づき」教育は重なる部分もありますが、考え方、対象領域、方法の点で異なるところもあります。今回はそこには目をつぶって、ことばをメタの視点から捉えることの重要性を考えてみようというのが編集部の狙いであると理解しました。


続いて、小学校、中学校、高等学校、大学での実践報告が掲載されています。


  • 小学校での実践 北野ゆき「「ことばって面白いなあ」---外国語学習で日本語、ことばを客観的に見てみよう」

  • 中学校での実践 王林鋒「中学校における複言語アプローチの外国語教育実践と省察---日本語・英語・複数の外国語をとおしてことばに気づく」 

  • 高等学校での実践 加藤晃浩「母語への気づきを促す教科横断型授業---「ことぱ」への知性や感性を高める」

  • 大学での実践 向後朋美「「ことぱへの気づきワークショップ」で気づきの育成支援---小学校教員をめざす学生を対象にした授業の実践例」


ここでも、各実践の基盤にある考え方、対象領域、方法にはばらつきがありますが、ことばをメタの視点から捉えようとするとこんな実践がありうるというサンプル集と受け止めるのが正解だと思います。いずれも力がこもった実践です。


この特集に合わせてわたくしの連載「もっと変わった言語学入門」でも、今回「ことばへの気づき」を取り上げました。


ところで、特集の記事ではないのですが、「学習英文法を聞い直す 理論言語学的観点から」という連載も載っていて、今回は「5文型の限界?そこから気づく新たな視点」というタイトルの論考です。著者は「編集部連載企画チーム」となっていますが、これ、なかなかの力作です。この論考を読みながらこう考えました。理論言語学の研究成果を英語教育に活かすという試みはいまもむかしもけっこう盛んです。しかし、近年のものを読んでみると、そもそもその書き方が難解であることが多い。英語の先生たちに読んでもらい、日々の実践に活かして欲しいと願うのであれば、もっとわかりやすく、ことの本質が鮮明になるよう書く必要あると常々思ってきました。この連載記事を読んで、《ああ、こう書くといいんだ!》と感じた箇所がたくさんありました。


一般化するのは危険かもしれませんが、基礎言語学の研究成果を言語教育の実践に活かす試みには教育の実践に携わる先生たちの参加が必要なのだと思います。さらに言えば、研究者の側にも、先生たちに基礎研究の成果をわかりやすく披露し、どうすれば言語教育の改善に資することができるかについて先生たちとの協働作業を行うことに関心を持つ人たちがもっとたくさん生まれ出ること、それが求められているのではないでしょうか。


この号にはもう一つ魅力的な論考が載っています。「英語教育にマクロの視点を」というリレー連載に南風原朝和さんが寄せた「教育行政の言説は教育的か」です。南風原節で小気味よく、教育行政のいまを批判しています。


『新英語教育』5月号をぜひお手に取ってください。



 

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