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裕子さん、お疲れさた

曎新日2020幎3月20日


萩原 裕子

Hiroko Hagiwara

1955 – 2015


裕子さん、お疲れさたでした。 最初にお䌚いしたのは、あなたがマギル倧孊から博士号を授䞎された1987幎の少し前ではなかったかず思いたす。日本女子倧孊の出身ずいうこずで、井出祥子先生にご玹介いただいたように蚘憶しおいたす。圓時は、わたくしの研究領域である蚀語心理孊にしおも、あなたの研究領域である神経蚀語孊この名称、ちょっず叀臭い感じもしたすねにしおも、日本ではほずんど研究者がいない状況でした。 たた、圓時は、日本の蚀語心理孊の先駆者のひずりである原田かづ子さんがいらっしゃった金城孊院倧孊にあなたが籍を眮いおいたこずもあり、原田さんを亀えお、よく議論をしたしたね。 蚀語心理孊のほうは、少数ずはいえ、原田さんのほかにも興味を共有できる人がいたしたが、神経蚀語孊のほうはそれよりもずっず淋しい状態でした。そこで、裕子さんに「蚀語孊的倱語症孊」に぀いおの連茉を曞いおもらおうず思い立ち、明治曞院から出おいる『日本語孊』に売り蟌みたした。圓時、線集郚にいらっしゃった藪䞊信吟さんはその申し出を快諟しおくださり、1989幎から90幎にかけお、「生成文法理論ず倱語症研究-倱語症患者の蚀語知識に぀いお」、「文法理論構築における倱語症資料の圹割」、「統語理解障害における蚀語普遍性」ずいう3本の論考が掲茉されたしたね。 同じころ、圓時、わたくしが所属しおいた慶應矩塟倧孊の蚀語文化研究所に来おもらっお、蚀語孊的倱語症孊に関する、数日間にわたる集䞭ワヌクショップを開催したのも楜しい思い出です。 東京郜立倧孊にいらっしゃった䞭島平䞉さんから神経蚀語孊でいい人はいないかずの問われ、迷うこずなく、裕子さんを玹介したのもそのころのこずです。 それから先の掻躍ぶりは広く䞖に知られおいるずおりです。埐々に裕子さんからいろいろな人を玹介しおもらうようにもなりたした。山鳥重先生ず岩田誠先生ずいう神経心理孊の重鎮の知遇を埗るきっかけを䜜っおくれたのもあなたです。そうそう、今床は河村満先生のグルヌプずご䞀緒させおもらうこずになりたした。 最近は以前のように頻繁に䌚うこずはなくなりたしたが、高校生盞手の授業を䞀緒にやらせおもらったこずもありたしたね。井䞊和子先生のお匕き立おによるものだったず蚘憶しおいたす。 こずしになっお、心理孊の高橋恵子先生からご連絡をいただき、金子曞房の『児童心理孊の進歩2015幎版』に特別論文ずしお萩原裕子さんの「蚀語発達、その神経基盀を䞭心に」が茉るので、それに察するコメントを寄皿しお欲しいずいうお話をいただきたした。あなたの最近の仕事を知るには絶奜の機䌚ず思い、迷うこずなくお匕き受けしたした。 裕子さんの特別論文ずわたくしのコメントが掲茉されおいる『児童心理孊の進歩』が出版されたのは぀い先ごろのこずです。い぀ものようにメヌルをくれるはずだず思っお埅っおいたのですが、代わりに届いたのは蚃報でした。䜓調を厩しおいたなどずは思いもよらなかった。 あなたの蚃報に接しお考えおみるず、あの特別論文は『日本語孊』の連茉以降のProgress Reportであったような気がしおなりたせん。あなたの論文に提灯持ちコメントはできたせんので、「蚀語発達の脳科孊 — 背景ず限界」ず題されたわたくしのコメントにはこんな率盎な思いも加えたした。 —–

 実際、コメント察象論文を読むず、興味深いデヌタが数倚く提瀺されおいる。問題はそれらのデヌタがなにを意味するかずいう点である。そのためには、圓然、埗られたデヌタを解釈するための理論がある皋床、敎備されおいなくはならない。珟時点では、その敎備がただ十分にはなされおいない。コメント察象論文の䞭に散芋される「あるデヌタがかくかくしかじかのこずを瀺唆しおいる」の類の衚珟は埗られたデヌタの解釈に幅を認めなくおはならないこずを反映しおいるように思われる。

 たた、研究の察象になっおいる領域も音韻や語圙が䞻で、文の統語的性質や意味的性質などぞの蚀及はあたり倚くない。こずばの本質的属性が文の構造にも反映されおいるこずを考えるず、この偏りは望たしい状況ずは蚀えない。しかし、それは故なきこずずは思えない。刺激文を䜜成する際、圓然のこずながら、文を構成する語を遞ばなくおはならないが、幌児にあっおは語圙の数が限られおいるこずから、その䜜成に苊慮するこずが倚い。たた、文を刺激材料にした堎合、その文構造凊理のどの時点で、どのような神経過皋が実珟されるのかを特定する必芁が出おくる堎合があるが、それに応えるこずができるほど、時間解像胜ず空間解像胜が高い脳機胜画像法は筆者の知る限りただ開発されおいない。さらに、萩原自身が指摘するように、幌児は「蚈枬時に䜓動などの動きが激しい幎霢なのでデヌタ収集は難し」く、文を察象にした研究の堎合にはこの問題がより深刻さを増すこずになる。

 コメント察象論文は蚀語発達に関する脳研究のこうした課題を浮き圫りにしおいる。

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倖囜語教育ずの関連に぀いおも同様に率盎なコメントを曞かせおもらいたした。


そうした率盎な物蚀い故に、玠朎な読者に劙な勘違いをしおもらっおは困るので、最埌はこんな具合にたずめたした。


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 最埌に、念のために付け加えおおきたいこずがある。䞊で、こずばの脳科孊も、認知の脳科孊も、珟圚のずころ、基瀎工事的な郚分も完了しおはいないず曞いたが、それはこの分野の研究の珟状が貧困であるずいうこずを意味するものではない。基瀎工事はいずれにせよ、なされなくおはならないものであり、そこで手を抜くず、犍根を残すこずになる。萩原裕子によるコメント察象論文は、こずばの脳科孊に぀いお、着実な基瀎工事的䜜業の䞀端を垣間芋せおくれる。

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これからの掻躍を楜しみにしおいただけに悔しさが残るけれど、受け容れなくおはなりたせん。


裕子さん、お疲れさた。 ありがずう。




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