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「学校英文法と学校国文法の連携に関する理論的・実証的研究」 科研費採択!

更新日:2020年3月20日

科学研究費基盤研究(B)(一般)


「学校英文法と学校国文法の連携に関する理論的・実証的研究」(研究代表者 大津由紀雄)として申請していた研究プロジェクトが採択されました。研究期間は2018(平成30)年度から2020(平成32)年度までの3年間です。

  研究分担者は、嶋田珠巳・明海大学教授、久保野雅史・神奈川大学教授、庵功・一橋大学教授、森篤嗣・京都外国語大学教授の4名です。また、研究協力者として、渡辺香代子・埼玉県杉戸町立西小学校教諭、久保野りえ・筑波大学附属中学校非常勤講師、斎藤菊枝・埼玉県立大宮武蔵野高校教諭、北川蘭・我孫子二階堂高等学校教諭、末岡敏明・東京学芸大学附属小金井中学校教諭に協力を要請しました。かなり強力な布陣と自負しています。

 本研究の概要は以下のとおりです。


外国語教育としての英語教育と母語教育としての国語教育の連携によって、児童・生徒らが人間にとってのことばの重要性や個別言語の相対性に気づき、ことばの力を十分に活用した効果的な言語運用が可能になる。英語教育と国語教育の全体的連携を達成するために第一に手掛けなくてはならないのが学校英文法と学校国文法の関係を明らかにし、その連携を試みることである。本研究は学校英文法と学校国文法それぞれの意義を再検討することから始め、その意義に見合った共通の文法的枠組みを構築する。その上で、その文法的枠組みを利用した学校英文法と学校国文法の体系とそれに基づいた教材を開発し、小中高の教育実践の場で、その効果を実証する。母語の力を十分に活かし、かつ、創造的な英語運用ができる子どもたちを育成することは喫緊の課題であり、本研究はまさにそのような社会的意義がある問題に取り組もうとする真摯な学術的試みである。


言語教育に関する、わたくしの考えをご存知のかたであれば、すぐ想像いただけるとおり、本研究は以下のような背景をもっています。


英語教育と国語教育はその連携の必要性が長い間叫ばれてきた(その歴史については柾木貴之. 2012. 「国語教育と英語教育の連携史」『言語情報科学』10, 125-141に詳しい)が現実的には一部の例外を除き実効が上がっているとは言い難い。しかし、研究代表者大津の「英語教育の在り方に関する有識者会議」(文部科学省、2014年2月から9月まで)などでの主張が受け容れられ、2017年3月に告知された、小学校・中学校の次期学習指導要領ではその連携(「関連」)の必要性を認識したうえで、その実現を促す姿勢が明確に読み取れる内容になっている(大津由紀雄. 2017.「次期学習指導要領から見た英語教育の今後の課題」『学術の動向』 11 月号、102-104.)。

また、近年、ヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR)が謳う複言語・複文化主義が注目を集めている。複言語・複文化状態とは共同体構成員一人ひとりの内部(心/脳)に複数の言語・文化が互いに関連づけられて存在する状態を指す。上述の次期学習指導要領でも(CEFRへの直接的言及は「中学校学習指導要領解説外国語編」のp.7だけであるが)小学校も含めて、外国語科の目標設定にはCEFRの影響が色濃く認められる。

こうした状況の変化にもかかわらず、英語教育と国語教育の連携へ向けた努力はこれまでのところ、あまり進んでいない。この原因は多々あるが、外国語教育としての英語教育と母語教育としての国語教育という相違を超え、メタ言語能力(「ことばへの気づき」)という概念を基盤に据えた言語教育を構築する必要性の認識が欠如していることが最大の原因と考えられる。

冒頭に記した状況に鑑み、英語教育と国語教育の連携に向けた努力は緊急性を持つ課題である。英語教育と国語教育の全体的連携を達成するために第一に手掛けなくてはならないのは、学校英文法と学校国文法の関係を明らかにし、その連携を試みることである。本研究はまさにその学術的・社会的要請に応えようとするものである。


研究成果は逐次、公開していきますが、初年度は秋から冬にかけての時期に、本研究プロジェクト主催の公開シンポジウム、ないしは、公開講演会の開催を予定しています。

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