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ぜひ観てください、「入社2年目の記者が見た転換点---検証 中学校英語スピーキングテスト」

2023年1月7日午前10時からTOKYO MXで「入社2年目の記者が見た転換点---検証 中学校英語スピーキングテスト」と題された30分のドキュメンタリーが放映されました。「入社2年目の記者」というのは椿原萌さんのことです。


正直に告白してしまえば、この番組のことを知った時、さほどの期待感は持てませんでした。TOKYO MXは東京都の広報放送局ではありませんが、東京都の方針に疑問を投げかけたり、批判したりすることはかなりハードルが高いように思えたからです。


とは言え、「入社2年目の」などという妙な(英語スピーキングテストとは直接関係がないと思われる)修飾表現が使われていることや今後の方向を指定しないで「転換点」と銘打っていることなどから、ひょっとするという期待もちょっとだけ抱いていました。


さらに、この期待を大きくしていたのは記者会見場などで熱心に取材する椿原さんの姿を見ていたからです。とは言え、椿原さんから単独の取材を受けたことはありませんので、どんな方なのかは知りません。文字どおり、不安8割と期待2割が入り混じった状態で番組を視聴することになりました。


番組を視聴し始めてまもなく、わたくしの不安はほぼ消え去りました。中学校英語スピーキングテスト(以下、ESAT-J)とはどのような位置づけで、どのような内容のテストであるのかについての解説、ESAT-Jの実施母体である東京都の知事、教育長、担当課長などの発言映像、ESAT-Jの入試利用に反対する保護者たちの発言映像、受験者である生徒たちの発言映像、ESAT-J対策指導を取り込んだ学習塾の様子などが丁寧に織り込まれた番組構成になっています。


生徒たちや保護者たちが抱いた不安や試験当日の実施状況に対する不満に真摯に向かい合おうとしない知事、教育長、担当課長の姿がじつに印象的に描かれています。


番組後半では椿原さん自身が英語教育「先進国」である韓国へ出向き、(ごく簡単にではありますが)そこでの英語教育の歴史を紹介し、その現状についての担当教員や英語教育研究者の声を紹介しています。おそらくはESAT-Jの現実をあまりよく知らないであろう、韓国の英語教育研究者の「(ESAT-Jを)肯定的に考えています」という発言を挟み込んであるのですが、「韓国の事例が必ずしも日本に合うとは限らない。日本らしい形で英語教育を発展させていくべき」という断り書きもきちんと付け加えてあります。


こうした取材をとおして、椿原さんの抱いたESAT-Jに対する疑問が解消されたのか否かについては番組の中では明らかにはしていません。しかし、全編を視聴すると、その問いに対する答えははっきりと浮かび上がってくるように思えます。


そして、締めのナレーションです。


「不安を抱く当事者の声に耳を傾けることも大切なのではないでしょうか。教育はすぐには変わらない。ただ、すぐに変えられるものだってあるはず。英語教育の大きな転換点、スピーキングテストは同じ方式でことしも行われます」。


椿原さんのメッセージに揺れはありません。巧みな構成の番組です。


幸いなことに、この番組はTOKYO MXの見逃し配信サイトで4月6日まで視聴できます。しかもネット環境さえあれば、どこからでも観ることができます。


エンドロールにお名前が出てくる都庁キャップや制作スタッフ共々、恐らくあったであろう抵抗をはねのけてこのような良質の番組を作った椿原萌さんとTOKYO MXに大きな拍手を送りたいと思います。

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