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なんでいまさら、という声に応えて

更新日:2020年3月21日

 この夏は、認知科学関係の講義・講演、言語獲得の実験とあわせて、急を要する言語教育関係の活動もあり、まったく休みがとれない状態です。

 言語教育関係では、すでに申し込みを受け付けている9月15日の英語教育シンポジウムが活動のハイライトです。きのう手元に届いた『英語教育』9月号は小学校英語の特集ですし、最近出た『英語展望』の最新号は「小池科研」の準報告書といった趣のものです。こうした押せ押せの状況に対しては慎重に対処する必要があります。とくに、小学校英語はすでに既定路線だから、もはや問題は賛成か、反対かではなく、どう対処するかだという認識はとても危険です。

 わたくしは、今回の学習指導要領の改訂で、小学校英語が①(もっと低学年からではなく)5,6年生における、②(外国語という教科ではなく)外国語活動という形に抑えられ、かつ、③ことばの楽しさや奥深さ(とくに、普遍性と多様性)ということが重要な学習項目として取り上げられていることの意味をもっときちんと理解すべきだと考えます。そして、案の定、そんな生ぬるい改訂では不十分で、小学校における英語の教科化や学習開始時期の早期化が叫ばれ始めています。それが表面化したのが教育再生懇談会の中間報告です。学習指導要領が改訂され、まだそれがどのような影響をもたらすかということもまったくわからない内にこのような報告がなされることには大きな違和感を抱きます。実際、『英語教育』8月号では、菅正隆文科省教科調査官がきわめて率直に気持ちを述べておられます。

 先日参加した、英語教育関係のある集会では、実践の場では外国語活動導入への対応に大わらわになっているという声をたくさん耳にし、どのようにしたら「負担の少ない導入」が可能であるのかが真剣に問われたりしていました。そうした声に対し、「改革とは痛みを伴うものだ」というどこかで耳にしたことのある、当事者の気持ちを顧みないことばが上から目線で返される状況も目撃しました。

 わたくしは、小学校英語問題はもう終わったのではなく、むしろ、これからが正念場だと心得ています。また、小学校英語問題を英語教育、さらには、教育全体のなかで論ずることがますます大切になってきていると考えます。

 ことばは人間だけに与えられた宝物です。それは子どもたちの発達において重要な役割を果たすものです。教育におけることばの問題をできるだけ根源的な部分から検討する必要があり、そうした活動の一環として企画したのが9月15日の英語教育シンポジウムです。英語教育の関係者はもちろん、小学校の先生がた、保護者のかたがた、そして、広くことばの問題に関心を持つ、多くのかたがたの参加を得て、言語教育が、そして、教育がこれから歩むべき道を模索したいと思います。ぜひご参加下さい。

 参加申し込みの詳細はhttp://oyukio.blogspot.com/2008/07/915.htmlにあります。メールでの申し込みはsanka915@otsu.icl.keio.ac.jpまでお送り下さい。

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